1953(昭和28年)/5/13公開 104分 モノクロ スタンダード 映倫番号:970
配給:東映 製作:東映
庶民の中から生れた英雄秀吉の生い立ちから織田信長に出逢う迄の、所謂苦難時代を、母の愛情に織りなして描いた感動の文芸時代劇。大東映が堂々たる布陣を以て放つ香り高き野心大作である。
いよいよ戦国時代の幕が上がる天文五年、尾張の寒村に足軽木下弥右衛門の息子として日吉は生まれた。少年時代は腕白大将として悪童を従えていたが、母の奈加は憂いていた。幼なじみのきくと仲が良かった日吉に、茶碗屋の泣き虫倅の於福は嫉妬の目を向けていた。やがて月日は流れ、実父弥右衛門が死に、奈加は同僚の築阿弥と結婚するが、築阿弥は酒に溺れ日吉や奈加に乱暴を働くようになる。母を安心させたい思いで家を出た日吉だったが、生来の腕白振りから何処に奉公しても長くは続かない。最後に母に連れられやってきたのは、若旦那となった於福が営む新川の茶碗屋であった。女中奉公していたきくは既に於福の想い人となり、子供の頃とは逆に於福の仕打ちを受け、世の無常を知らされる日吉。そしてある日、野武士の渡辺天蔵が客を装い家宝赤絵の名器強奪に押し寄せてきた。日吉は機転を利かせて血を見ることなくこれを追い返したのだが、於福が自分を疑うことに怒り、飛び出してしまう。遂に日吉は父の遺言に従い武士になることを夢見、諸国放浪の旅に出た。針売りとして諸国を巡り歩いた日吉は、尾張であの名器強奪を企てた天蔵を成敗するためにやってきた蜂須賀小六と運命の出会いを果たす。小六は、美濃の斉藤道三、義龍親子の家督争いに巻き込まれていた…。